任意整理による住宅ローンへの影響は?整理中と整理後について

任意整理による住宅ローンへの影響は?整理中と整理後について

監修弁護士 紹介

鬼沢健士(おにざわたけし)

  • 鬼沢健士(おにざわたけし)
  • じょうばん法律事務所
  • 茨城県弁護士会
  • 弁護士登録2010年

弁護士は裁判が仕事ですが、弁護士に頼む人にとっては一生に一度あるかないかの一大事です。そのことを肝に銘じて、誠心誠意取り組んでいます。また、できるだけお早めに相談してください。病気と同じで、放っておくと悪化するのが普通です。早ければ早いほど解決しやすくなります。

任意整理を行うと、その後の借り入れが難しくなることがあります。特に住宅ローンは他のローンで代用が利くものではないため、利用できないと人生設計が変わりかねません。また住宅ローンを組んでいる人が任意整理をすると、住宅がなくなるのではないかという心配もあるでしょう。住宅ローンについては任意整理で悪影響を与えない方法があります。任意整理後に住宅ローンをまったく組めなくなるわけでもありません。住宅ローンと任意整理の基礎知識や影響を理解しトラブルを起こさなくてすむ方法を選択できるようになりましょう。

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住宅ローンの基本知識

住宅ローンには運営元が民間企業や公的機関などさまざまな種類があります。運営しているところによって金利や条件も違うため、扱っている商品の概要を知りたければ運営元がどのようなところかを知っておくと良いでしょう。

住宅ローンの種類は3つ

住宅ローンとは住宅の購入に特化して用意されたローンです。住宅の購入にはかなりまとまった資金が必要なので、金融機関から住宅購入資金を融資してもらわないと手に入れることは難しい傾向といえます。借り入れる金額も大きくなるため、一般的なローンでは金利がかさみ過ぎるのです。

住宅ローンは、ローンで購入しようとしている建物や土地を担保にすることで、他のローンよりも低金利で貸し付けがされる仕組みになっています。

住宅ローンは運営元によって、大きくは3つに分けられます。銀行などの民間融資、地方自治体など公的融資の財形住宅融資、民間と公的機関の提携融資のフラット35です。民間融資は扱う商品によって借入金利を固定金利もしくは変動金利のどちらかを選択できます。一定期間ごとに金利を見直すタイプも金融機関によっては選べるため選択肢は広いです。財形住宅融資は財形貯蓄をしている人だけが利用できるローンです。金利は5年間固定で、その期間がたつと金利が見直される方式になっています。民間融資やフラット35と併用して利用することも可能です。フラット35は民間の金融機関と公的な住宅金融支援機構の提携によって提供される住宅ローンで、返済期間が最長35年間の固定金利型です。ただし利用は住宅金融支援機構の基準を満たす住宅に限られます。

住宅ローンの審査基準のポイント

一般的に住宅ローンで借り入れする金額は高額で完済するまでには長い期間が掛かります。そこで住宅ローンを提供する金融機関は希望者の属性を重視して融資の審査をします。属性とされる内容は職業と勤続年数、年収、健康状態、そして個人信用情報といったものです。

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任意整理をすると住宅ローンを組めなくなる?

任意整理は債務整理のうちの1つです。借金がふくらんだときに手続きを取って遅延損害金カットや返済期限の延長によって完済しやすくなるという方法です。任意整理は債務整理の中では行いやすいほうの手続きですが、行ったことで住宅ローンに影響が出ることも知っておかなければなりません。

任意整理をするとブラックリストに載る?

任意整理をすると一時的に住宅ローンを組めなくなるのは、ペナルティとしてブラックリストに一定期間登録されるからです。ブラックリストといわれていますが、そのようなリストが実際に作られているわけではありません。ブラックリストとは個人信用情報に借り入れに関する事故情報の記録が残ったり延滞情報が登録されたりすることを、信用情報が傷ついたという意味で「ブラックリストに載った」と表現しています。金融機関や貸金業者は、個人信用情報機関で顧客の個人情報を共有管理し何かあったときには照会しています。取引記録を見れば、債務者の信用度を推し量ることができるからです。

3つの個人信用情報機関とは

個人信用情報機関には3つあります。消費者金融系のJICC、クレジットカード系のCIC、銀行系のKSCです。加盟している企業と取扱商品で共有したい顧客情報が変わってきます。個人信用情報機関の加盟店と借り入れの契約を結ぶ際には契約書を作成します。そして契約書には、記載された個人情報を個人信用情報機関に登録することが記載されています。個人信用情報機関には契約書に記入した個人情報だけでなく、返済時や加盟店が照会したときの情報なども記録され随時更新されています。JICCではメイン加盟店が消費者金融、CICではクレジットカード会社と機関を利用している企業が違います。しかし完全に分かれているのではなく、別業種の企業も数は少ないですが利用して情報提供をしているのです。

ブラックリストに載ったままでは住宅ローンを組めない

ブラックリストに登録されると対象になった債務の会社だけでなく、それ以外の企業の借り入れ審査にも落ちるようになります。住宅ローンの審査時も例外ではなく、個人信用情報の照会が行われて事故情報があれば審査に通りません。住宅ローンの審査を申し込むと、ローン会社は個人信用情報機関に必ず照会を行います。しかし個人信用情報機関に事故情報が登録されていると審査で重視される個人信用情報という項目ではねられてしまいます。返済能力がないと見なされるのです。住宅ローンを組む予定を立てるときには自分の個人信用情報がどうなっているかにも気を配る必要があります。

家族には任意整理をしても影響はない

任意整理をしてブラックリストに登録された場合は、そのことが家族に影響するのではないかと心配になる人もいるでしょう。しかし個人信用情報に登録されるのはあくまでも個人の記録です。借金はひとりひとりが背負うもので世帯が負担するものではありません。そのため任意整理をしてブラックリストに登録されていても、住宅ローンに申し込む人の個人信用情報に傷がついていなければ問題はありません。

ブラックリストに登録された人は住宅ローンに申し込んでも審査落ちとなりますが、任意整理をしていない家族が住宅ローンを組む場合は審査に通る可能性があります。住宅ローン会社の審査は申し込んだ人についてのみなされます。もし申込人がブラックリストに登録されているなら、登録されていない家族を借り入れの申込人にすることで住宅ローンを組むという方法も取れるのです。

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現在返済中の住宅ローンは任意整理から外せる

住宅ローンを返済している最中に、他の借金が原因で任意整理を行わなければならなくなることもあります。そのときに住宅ローンも債務整理の対象になるのかというと、それはその人次第です。なぜなら任意整理は整理する対象の債務を選べるからです。

対象を選べるのが任意整理のメリット

任意整理では弁護士などの法律の専門家に仲介してもらい、借入先である債権者と話し合って債務整理を行います。借り入れた債務者が個人的に行うものなので、話し合う相手を自由に選択できるのです。そのため住宅ローンを任意整理の対象から外して、引き続き返済をして完済できれば悪影響はありません。任意整理はトラブルが起きそうな借金は避け、自分の行いたい債務だけを選択して整理できるのがメリットです。

住宅ローンと同じ銀行のカードローンは任意整理できる

任意整理で債権者を選べるといっても、住宅ローンを組んでいる銀行のカードローンを任意整理するのにはためらいがあるかもしれません。同じ銀行だと任意整理した情報が共有されてしまうと考えるでしょう。しかし住宅ローンに関しては、カードローンとは別枠として扱われます。住宅ローンを支払い続けられるならカードローンについては任意整理をしてもかまわないことになっているのです。しかしカードローンの任意整理をするとその銀行に作った口座は凍結され、残高はカードローンで銀行が被った損失の補填に当てられます。住宅ローンの支払いが口座ではしばらくできなくなるのです。

住宅ローンを任意整理してしまうと家が担保として取られる

返済中の住宅ローンが支払えなくなっても、原則的には任意整理はできないことになっています。原則できないので、例外では任意整理できる方法があります。しかしそれは最後の手段だと考えるべきです。完済していない住宅ローンを任意整理の対象にすると、抵当権が実行されます。

つまり担保になっている土地や建物が差し押さえられ、売却されてしまうのです。任意整理をしたあとは残りの借金を返さなければなりません。しかし返済中の住宅ローンを任意整理すると、肝心の家はなくなって住宅ローンだけが残るという状態になるのです。

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任意整理後に住宅ローンを組めるようになるまでの期間

任意整理をすると一定期間ブラックリストに登録されます。その間に住宅ローンを組もうとしても金融機関の審査には通りません。個人信用情報機関の事故情報が削除されるまで待ちましょう。登録期間やその確認方法を把握しておくと、事故情報の削除を確かめるのが容易になります。

任意整理から5年間はブラックリストで住宅ローンは組めない

任意整理をすると5年間は住宅ローンを組めません。任意整理のペナルティで個人信用情報機関に事故情報が登録される期間が5年だからです。しかしこの5年という期間には幅があります。個人信用情報機関によって事故情報の登録時期に違いがあるためです。任意整理をしたときと任意整理後に借金を完済し終わってからとの2通りがあります。

任意整理から5年たっていても、完済後に登録されるタイプの個人信用情報機関の加盟店ではブラックリストを確認できることがあります。そのときに完済とブラックリスト登録のどちらを重く見るかは金融機関によって異なります。そのため状況によっては任意整理から5年たてば、必ず住宅ローンが組めるようになるというものではないのです。あくまでも5年間というものは目安なので、正確に借りられる期間が決まっているわけではありません。

ブラックリストから情報が消えれば住宅ローンは組める

ブラックリストに登録されている間は、たとえ借金を返し終わっていたとしても住宅ローンの審査は通りません。しかし個人信用情報機関から事故情報が完全に削除されれば借り入れることも可能になります。削除後は、住宅ローンの他の審査項目をクリアできればまた住宅ローンを組めるようになるのです。

個人信用情報を確認する方法

住宅ローンの審査を申し込む前に、確実に自分の事故情報が削除されているか知りたいなら開示請求をすると良いでしょう。個人信用情報機関は、請求されればその本人の情報を開示するよう制度で定められています。機関によって請求方法は違い、郵送のみのところやインターネットでも請求できるところがあります。請求できるのは本人かその代理人だけで、書類やネット上に必要事項を記入して送付します。

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任意整理後に住宅ローン審査に通りやすくなるために

任意整理でブラックリストに登録されても、一定期間経過すれば事故情報は削除されます。しかしその際にすべての取引記録も削除されてしまうので、個人信用情報という点では住宅ローンの審査は不利になります。良い履歴も残らないために、審査の判断が難しくなるのです。そのようなときには、できるだけ審査に通りやすくなる対処法を取りましょう。

住宅ローンを家族名義で申し込む

任意整理後に住宅ローンを組むコツとしては、任意整理をした人ではなく家族名義で申し込むという方法があります。借り入れの名義人には世帯主がならなければいけないようなイメージがありますが、そのような決まりはありません。ただし住宅ローンの審査は申し込んだ家族の個人に対して行われますから、住宅ローンを組めるだけの一定の年収や職業属性などが必要です。その条件を満たせるなら家族名義で申し込むと良いでしょう。

金利が高い住宅ローンのほうが通りやすい

任意整理後で住宅ローンの審査が不安なら、あえて金利の高い住宅ローンを選ぶという方法もあります。金利の低い住宅ローンは比較的細かい審査項目がある傾向です。しかし高金利の住宅ローンのほうが金利の低い住宅ローンより審査項目が少なく、やや審査がゆるめになっていると考えられるからです。

任意整理の対象の金融機関は避ける

任意整理後に住宅ローンを申し込む場合には、任意整理をした金融機関やそのグループ関連会社は避けなければなりません。任意整理を行った人は、その企業では社内ブラックとして情報が登録されます。登録記録は社内のデータベースで共有され、個人信用情報のように登録期間も設けられていません。そのため事故記録は消えることがなくグループ会社も情報を共有しているため住宅ローンは組めません。無期限で要注意人物扱いされるのです。任意整理後に住宅ローンを組むコツとしては、必ず任意整理していない金融機関へ借り入れ申し込みをする必要があります。

収入合算やペアローンで融資を増やす

任意整理をしたあとで住宅ローンを組むときには、収入合算やペアローンを活用してみるのもひとつの方法です。収入合算では夫婦や親子などの家族の収入を合わせた金額を年収として住宅ローンに申し込みます。ペアローンは、夫婦で別々の住宅ローンを組むというものです。住宅ローンの借入金額は年収から決定されるので、収入合算をすればひとりのときよりも多くの金額を借り入れられます。ペアローンでは住宅ローンを2つ利用できるようになるため、ひとつだけでは融資が足りなくてもまかなえる可能性が高まります。任意整理後に高額の住宅ローンの審査に通る自信がないときは、家族の力を借りて補うことを検討してみましょう。

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任意整理での住宅ローンへの影響を抑える方法を理解しておこう

任意整理をすると住宅ローンにも影響がおよびます。しかし任意整理は自分の判断で整理する対象の債務を選べるので支払い中の住宅ローンに手をつけなければ問題は起こりません。任意整理後はブラックリストに登録されますが、それが個人信用情報機関から削除されれば、また住宅ローンを組めるようにもなります。任意整理後の審査前には事故情報が消えているかを個人信用情報機関へ開示請求をして確認しましょう。

さらに債務整理を行った金融機関は社内ブラックになっているので、別の金融機関から住宅ローンを申し込むようにしましょう。またひとりでは借りられない金額でも収入合算やペアローンなど家族の協力があれば借り入れすることも検討できます。借金問題があるときでも任意整理では、住宅ローンでトラブルを起こさないようにする道がいくつも用意されています。任意整理と住宅ローンの影響をしっかり把握したうえで適切な選択をすればメリットを大きくすることができるでしょう。

弁護士が教える任意整理