過払い金請求には期限がある?そのまま消滅時効を迎えてしまわないためにできること
監修弁護士 紹介
- 鬼沢健士(おにざわたけし)
- じょうばん法律事務所
- 茨城県弁護士会
- 弁護士登録2010年
弁護士は裁判が仕事ですが、弁護士に頼む人にとっては一生に一度あるかないかの一大事です。そのことを肝に銘じて、誠心誠意取り組んでいます。また、できるだけお早めに相談してください。病気と同じで、放っておくと悪化するのが普通です。早ければ早いほど解決しやすくなります。
過払い金請求には、時効というものが存在します。いつまでもできるものではなく、一定の時間が経てば請求することすらできなくなるのです。過払い金の金額は、人によっては高額になり、取り戻せるかどうかが人生に影響を与えることさえあります。時効までの期間と、それはいつから起算されるのかといった基本事項を知っておけば、請求するのに残されている時間がわかるようになります。また、残り時間が少なくても、対処する手立てがないわけではありません。過払い金請求の時効に関して、理解しておきたいことを解説します。
もくじ(メニュー)
いつまでできる?過払い金の時効までの期限とは
過払い金請求は、借金の返済で払う必要のなかった金額まで支払ってしまった場合に、それを取り戻すための手続きです。しかし、請求すればいつでも取り戻せるというものではなく、期限があります。その確認を怠っていると、大きな損をしてしまうかもしれません。
過払い金請求には消滅時効がある
借金の利息は、法律で定められています。その利息よりも多い金額を支払ったものが過払い金です。この過払い金は、支払った貸金業者に請求して応じられたり、裁判所に認められたりすれば返金されますが、請求には期限が存在します。それが消滅時効で、過ぎてしまえばいくら払い過ぎていても、お金は戻ってきません。
時効とは、定められた一定期間、とある事実が継続した場合、それが真実でなかったとしても、現在の状態を維持するという決まりです。そして過払い金請求にも消滅時効はあり、期間内に行使しなければ、使わなかったという事実が優先されて、権利が消滅するのです。
過払い金の消滅時効までの期限は最終取引日から10年
債権の消滅時効は、扱われる財産の種類によって違いがあります。過払い金請求という権利を使える期限は、10年です。この10年という期間はどこから計算するかというと、最終取引日が起点となります。例えば借金を完済した日から10年経つまでは、過払い金請求を行えるということです。
2017年で請求はシャットアウト?過払い金請求期限についての間違い
TVやラジオなどの広告で、2017年になると過払い金請求ができなくなるといった内容が流されていたことがありますが、それは正確な表現ではありません。なぜ2017年が問題になるかというと、2006年に最高裁が利息制限法を超えた金利について無効と判断し、翌2007年から多くの業者が金利を引き下げたからです。
そのため、過払い金が発生するような貸し付けがなくなりました。借金の利子を支払い過ぎる取引がなくなって10年になるので、消滅時効の期限が迫っているという意味だったのです。しかし取引内容によっては、2017年を過ぎても過払い金請求はできるため、自分の借金の取引内容を把握することが大切です。
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貸金業者の金利改定から10年と過払い金請求期限は連動するか
2017年に貸金業者が金利改正をすることになったのは、それまで利息についての法律が2種類あったためです。一方の法律から見れば金利が高過ぎるのに、もう一方から眺めると適正という、グレーゾーン金利と呼ばれる状況が発生していました。
しかし、2006年の最高裁の判決以降、一気に過払い金が発生するような金利は下げられました。そして、そうなったことで、過払い金が出る改定前の金利で借金をした人の返済請求期限が、クローズアップされるようになったのです。金利の引き下げから消滅期限となる10年が経過するからです。
2007年に貸金業者の多くが改定を行った
借金の金利に関しては、以前は利息制限法と出資法という2つの法律がありました。このうち、出資法では利息制限法より高い利息で貸し付けができたので、貸金業者はこちらを採用するほうが多かったのです。出資法の金利で貸しても罰則はなく、債務者が利息だという認識で支払っている場合は、利息制限法の金利よりも高い利息で貸し付けて良いという「みなし弁済」という規定もありました。
そこで利息制限法の金利の上限と比べると、利息を支払い過ぎている過払い金という事態がたくさん起きることになったのです。しかし2006年に、みなし弁済は無効という判決が下され、債務者が利息制限法違反であることを知りながらわざわざ支払わない限り、利息制限法以上の金利にもできないことになりました。
これを受けて法律が改正され、貸金業者が金利改定をしたのが2007年です。これ以降、過払い金請求が起きるような貸し付けはほぼ行われていないため、消滅時効の期限である10年後の2017年が注目されることになりました。
期限切れが近い人はたくさんいるはず
2007年までに、かなりの数の貸金業者が利息制限法の上限に合わせて金利の改定を行いました。ですから、過払い金請求ができる権利を持つ人は、改定前の金利で借金をした人です。取引開始から返済が終わるまでに年単位で掛かる場合もありますから、2017年になればすぐに、すべての人が消滅時効になるわけではありません。
しかし、すでに完済した人は、消滅時効期間に注意し、できる限り早く過払い金請求をした方がいいでしょう。
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消滅時効はいつから計算するもの?
過払い金の消滅時効が10年だということがわかっても、起算日の考え方を誤ると、思わぬ計算間違いをする可能性があります。最終の取引日がいつになるかは、取引の仕方によって解釈が変わるためです。起算日についての基本を押さえておかなければなりません。
消滅時効が成立すると取り戻せなくなる過払い金
過払い金請求は、消滅時効の10年が経過すると、支払い過ぎた金額が大金でも返ってこなくなります。権利を行使するには期限があるためです。時効というのは、貸金業者も行使しなければ成立しないものなのですが、時効期限の10年が過ぎたらいつでも主張できます。
これを援用といい、こちらは時効を過ぎた状態で主張さえすれば良いのです。時効を援用されれば、もう返金はかないません。ですから、取引の最終日から10年たってしまうと、過払い金は実質取り戻せなくなるのです。
完済した取引の起算日は
取引の最終日は、借金の返済が終わっている場合は、最後に返した日がそれに当たります。この日から10年経つと、貸金業者は過払い金請求の消滅時効の援用ができてしまうのです。過払い金が発生したときから10年という考え方も以前はありましたが、それだと貸金業者側に有利になるため、現在では取引終了日から10年ということになりました。
返済や借入が続いている取引の場合
借金の返済を継続している取引については、その返済した最後の日が、取引の最終日となります。返済中だと取引が続いているのだから、何年経っても消滅時効が来ないということにはなりません。最後に返済した日から、何かの理由で10年支払いを止めてしまった場合には、その後で過払い金請求をしても、時効が成立してしまうのです。
返済だけでなく、その最中にまた借金をした場合は、その最後の日が消滅時効の起算日になります。最後に行った取引が返済でも借入でも、取引が成立すれば、それが最終日なのです。
取引は別々?一連か分断かで起算日は変わる
借入して完済し、また借入することを繰り返したとします。一度完済しているのだから、消滅時効の起算日は完済の日になるかというと、そうとは限りません。次に行った借金が、その前の完済した借入と関わりがあると見なされると、連続した取引として扱われるからです。
一連の取引となった場合は、その最後の取引日が時効の起算日になりますから、単独扱いのときより過払い金請求できる期間が長く続くことになります。しかし、完済と次の借入までに数年空くなどして、分断した取引とされれば、消滅時効も取引ごとに個別に数えなければなりません。
これらの断続的な取引が一連の取引とされると、過払い金が最初の取引で発生していれば、次の借入にその金額が当てられ、借金の元本を減らせるという計算方法になります。そうすると、返済しなければならない利息も減額されるため、過払い金が増加するという結果にもなるのです。
ですが、これはあくまで一連の取引だと判断された場合で、分断していると見なされれば、最初の取引の時効は思ったよりも早く来るかもしれません。同じ貸金業者に借入と完済を繰り返している場合は、基本契約書を確認しましょう。内容が共通していれば、一連の取引となる可能性が高まります。いずれも過払い金請求で取り戻せる金額に関わってきますので、しっかりと確認しておくことが大切です。
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時効までぎりぎり!過払い金請求の消滅時効を止める方法
- 4-1:請求する意思表示・催告を行う
過払い金請求の消滅時効は、請求という権利を行使すれば止めることができます。そしてその方法は大別すると2つあり、裁判所を通すか通さないかです。裁判所を通さない方法は、簡単にできますが止める力も小さく、最終的にはやはり裁判手続が必要です。
最初から裁判所を通す場合は、労力が掛かる代わりに、今までの時効までの年数経過をなかったことにできることもあるのです。自分の状況に適したやり方を選べれば、過払い金を取り戻す大きな力になるでしょう。
請求する意思表示・催告を行う
催告とは、裁判所を通さずに消滅時効を止めるための手続きです。行うには、内容証明郵便などの証拠を残す方法で、貸金業者に過払い金請求を行うという意思表示をします。こうすることで、時効を6ヶ月間延長させることができます。しかし、この方法で止められるのは1度だけです。そして、時効が中断したとされるためには、催告日から6ヶ月以内に裁判所への訴えることが必要です。
また、提訴手続きには時間が掛かります。最初から訴訟にするつもりでも時効の期限が迫り、手続きの時間すら取れないというときには、催告をして手続きができるだけの時間を稼ぐという使い方もできるのです。催告日は、郵便を出した日ではなく、貸金業者に意思表示の書類が届いた日となります。催告をしておけば、消滅時効期間が間近の場合に、余裕をもって提訴手続をとることができます。
裁判を起こす・過払い金請求の訴訟を提起する
裁判所に過払い金請求のための訴えを起こせば、とりあえず消滅時効について心配することはなくなります。訴訟提起をして受け付けられれば、その時点で時効は中断するからです。訴訟するためには、訴状と取引の内容の証拠になるものや、過払い金請求の根拠となる計算方法を提示した書類などを添えて裁判所に提出します。
過払い金の額が少額であれば簡易裁判所ですが、一定の金額を超えると地方裁判所に提訴することになります。裁判ですから、こちらの訴えだけでなく貸金業者の主張も聞き、和解か判決かの結果を迎えます。
裁判を起こすには、専門家の手を借りなければならないことが多く、時間やお金も掛かりますが、結果には法的拘束力があります。特に取引内容が一連か分断かといったような、どちらを取るかで過払い金の金額が大きく変わるような状況では、貸金業者も強く争ってきます。専門家の力を借りることで、相手に押し切られることがなくなるのです。時効中断の効果は、訴え提起時に発生します。時効が間近の場合には特に急いで提訴する必要があります。
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時効が迫っているからといって泣き寝入りする必要はない
過払い金請求には期限があり、消滅時効を過ぎてしまうと取り戻せません。そして2007年の貸金業者の金利改定から10年が経つため、支払い過ぎてしまって請求していない人の多くは、時効が迫っていることになります。
しかし、10年経ったと思い込んでいても、取引内容によっては、まだ時効が来ていないかもしれません。また、所定の手続きを取ることで、時効までに時間がなくてもそれを止めることもできます。過払い金は、本来なら払わなくて良かったお金ですから、簡単にあきらめてはいけません。時効が来ているかどうかあやふやなときには、泣き寝入りをしなくても済むように、専門家に相談して正確な起算日を調べてもらい、尽くせる手を尽くしましょう。
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