連帯保証人や遺族でもできる?本人以外による過払い金請求とは
監修弁護士 紹介
- 鬼沢健士(おにざわたけし)
- じょうばん法律事務所
- 茨城県弁護士会
- 弁護士登録2010年
弁護士は裁判が仕事ですが、弁護士に頼む人にとっては一生に一度あるかないかの一大事です。そのことを肝に銘じて、誠心誠意取り組んでいます。また、できるだけお早めに相談してください。病気と同じで、放っておくと悪化するのが普通です。早ければ早いほど解決しやすくなります。
法律で定められている金利の上限を超えているにもかかわらず、刑事罰が問われることがないグレーゾーン金利を利用して、貸金業者が過剰に受け取っていた利息分が過払い金です。そして、この過払い金を返還してもらうための請求を過払い金請求といいます。通常、過払い金請求を行うのは本人、あるいは本人からの依頼を受けた弁護士や司法書士といった専門家です。しかし、何らかの事情により本人が過払い金請求や請求依頼を行うことができないという場合もあるでしょう。そこで本人以外による過払い金請求の可否について詳しく解説します。
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本人以外でもできる?気になる代理人による過払い金請求の可否
過払い金とは、利息制限法に基づいて正しく返還請求されていれば支払う必要がなかった利息です。人によっては思いのほか大きな金額となっていることもあります。受け取ることができるお金があると知った場合、本人のためにできる限り回収した方がいいと考える人は少なくないことでしょう。過払い金請求は、本人以外の人が行うことも可能です。ただし、本人以外が請求する場合には条件があるため注意しておきましょう。
誰が請求してもいいわけではない!過払い金請求の原則は本人による請求
過払い金請求は本人以外でも行うことは可能です。ただし、原則としては債務者となっている本人が請求するものとされています。これは弁護士や司法書士に依頼する場合でも同じです。基本として、過払い金請求を行う権利を持っているのは債務者本人のみであるという点はしっかりとおさえておく必要があります。
しかし本人以外とはいえ、債務者本人が背負う借入金を同じ責務で負っている立場の人がいます。連帯保証人です。過払い金請求は利息制限法の定めを超える金利で返済を行った利息分について、支払った本人が請求できる仕組みです。このため、債務者本人が返済できずに連帯保証人に回ってきた返済の分に過払い金が発生することが判明した場合には、債務者本人以外である連帯保証人でも請求することは可能となるのです。
委任状があればOK!本人以外が過払い金請求をする方法
債務者である本人が病気やケガを理由に自分で動くことが難しい状態であるなど、自身による過払い金請求ができない場合もあります。そのような場合には、委任状があれば本人以外でも請求することは可能です。債務者本人により、自身の代理人として誰に委任をするかといった内容を明確に記載することが必要となります。代理人が請求するために委任状が必要となるのは、本人に請求する意思があるかを確認するためです。
本人に請求する意思がないにもかかわらず、勝手に返還請求行為を行うと返還請求が無効となる「無権代理」となり、正当な請求とは認められなくなってしまうため注意が必要です。
相続人ならできる!遺族による過払い金請求
本人以外の人しか過払い金請求を行うことができなくなる理由として、債務者本人が亡くなってしまったといったケースも挙げられます。亡くなった後に家族に借金があることを知ったり、その借金について過払い金が発生することが判明したりするということもあるでしょう。このような場合には、本人が亡くなってしまった後であるため委任状をとることはもちろんのこと、本人に過払い金請求をしたかったという意思があったかどうかを確認することもできません。
このようなケースでは、相続人である場合に限り委任状なしで過払い請求をすることが可能となっています。過払い金が借入金より多く発生することがあれば、借入金を残したままの状態で亡くなってしまった場合でも、借金をゼロにし、さらに相続人の手元の財産を残すことも可能となるのです。
相続人が過払い金請求を行う際には、亡くなった債務者の出生から死亡時までの記載がある戸籍謄本と、相続人が誰であるかを証明するための相続人全員の戸籍謄本が必要となります。なお、平成29年5月29日から法定相続情報証明制度が開始されておりますので、相続関係を明らかにすることは格段に容易になりました。
もし、亡くなった人が遺産の分割についての遺言を残している場合には遺言書を、法定相続人全員が法律の定め通りに相続しない場合には印鑑証明を添付した遺産分割協議書を用意しておくことが必要です。相続を放棄している法定相続人がいる場合には、相続放棄申述受理証明書も準備しておきましょう。
相続人が過払い金請求をする場合の注意ポイントとは
亡くなってしまった親や配偶者などの家族が借金をしている場合、原則として相続が開始されたことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に相続を放棄する旨を申し出ると、借金を放棄することができます。しかし、相続を放棄するということは同時に過払い金請求の権利も放棄することとなるのです。
借金を背負いたくないという想いと、相続放棄することができる期限が3ヶ月以内と定められていることから、慌てて相続放棄の手続きを取ってしまう遺族もいます。しかし、計算の結果、借入金が残っていると思っていたのに過払い金が発生していたということもあり、、プラスのお金が手元に戻る可能性もあるのです。このため、家族に借金が残っていると判明した場合でも慌てずに、まずは借入金の総額と過払い金として戻る可能性のある金額、借金の状況についてしっかりと確認しておくことが大切です。
また、過払い金請求には時効があります。最後に取引を行った日から10年以内に請求の手続きを行わないと過払い金請求の権利は消滅してしまいます。家族が背負っていた借金の最終取引日を確認し、10年を超える期間が過ぎている場合には、過払い金を回収することはできません。しかし、最終取引日から10年以内であり、相続人に過払い金請求をしたいという意思がある場合には、時効があることをしっかりと頭に入れて手続きを進める必要があるのです。
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本人以外の代理請求で注意するポイントとは
過払い金請求は原則として本人が行うものとされています。例外的に本人以外の代理請求を行う際には下記に紹介するいくつかの注意点を知っておくことが大切となります。
難航する可能性が高い?業者との和解交渉
過払い金は法律には定められていない利息であるとはいえ、貸金業者にとっては刑事罰に問われない方法で手に入れたお金をできれば債務者に返したくないというのが本音です。そのため、過払い金請求が債務者本人以外の個人からの請求であった場合には、例外的なケースであることも理由に、積極的に応じてくれないことも少なくありません。特に和解交渉は貸金業者との駆け引きが必要です。
代理人として請求する人が専門知識のない個人である場合には、貸金業者がさまざまな専門的な知識を使って請求者に不利な条件を提示し和解交渉が難航する可能性が高いのです。
弁護士以外はダメ?代理請求で報酬をもらってはいけない
本人以外が過払い金請求をするには、基本的に委任状があれば代理人でも請求手続きを行うことはできます。また、委任状を受けることにより貸金業者との交渉をすることも可能となります。しかし、たとえ正式な委任状がある場合でも、弁護士や司法書士以外である個人が報酬をもらって交渉を行ったり請求手続きを行ったりすることは法律で禁止されているのです。委任状を受けて代理で請求手続きをする場合には、必ず無償で行ってください。
過払い金の金額によってできなくなることも?代理請求の140万円のボーダー
過払い金請求について裁判を提起する場合、地方裁判所で行う方法があります。ただし、地方裁判所への裁判の手続きの代理人は弁護士以外には認められていません。また、地方裁判所で行う裁判は原則140万円を超える請求額の場合となっています。
請求する過払い金の総額が140万円以下である場合には、簡易裁判所で裁判を行うことになります。簡易裁判所であれば、簡裁代理認定を受けた司法書士にも訴訟代理権は認められているのです。また、司法書士のみならず、裁判所からの許可を得た人であれば本人以外の一般の個人でも訴訟代理人となることは可能となっています。裁判所の許可を取るためには、裁判所に代理人許可申請書を提出することが必要です。
本人以外では難しい!代理人による専門家への依頼
債務者である本人以外が過払い金請求をする場合、交渉や手続きに難しさを感じ、専門家に依頼したいと考える場合もあります。しかし、代理人が弁護士や司法書士といった専門家に過払い金請求の依頼を行うことは難しいのが現状です。弁護士や司法書士は依頼人から正式に依頼を受けると委任契約を結びます。委任契約は依頼者本人と依頼を受ける本人とで法律行為の委託するためのものです。後でトラブルが生じないために重要な手続きとなっています。
委任契約はあくまで本人同士で行うことが必要です。このため代理人の場合には、依頼者本人ではない債務者の承諾なく委任契約を結ぶことができないことになっています。そして委任契約を結ぶことができなければ、弁護士や司法書士は代理人から依頼を受けることすらできなくなるのです。
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過払い金請求の代理ができないのはこんなケース
過払い金請求を本人以外が代理で行いたいと考える事情は人それぞれです。そこで自分が置かれている状況で過払い金請求を代理で行うことができるのかを確認するために、代理請求ができない具体的なケースについてご紹介します。
認知症などが原因で判断能力がないケース
日本では認知症患者が年々増加傾向にあります。そのような中で、債務者である本人が認知症になってしまうというケースもあることでしょう。認知症とは、さまざまな原因により脳が正常に働くことができなくなってしまう症状です。記憶障害が生じたり、筋道を立てて物を考えることができなくなってしまったりします。
このため、認知症になってしまうと、過払い金請求についての正しい意思決定をすることができない状態となってしまうのです。過払い金請求の権利はあくまでも債務者本人にあります。本人以外である代理人が、本人の意思を正しく聞くことなく勝手に過払い金の請求を行うことは不可能となっているのです。
ただし、成年後見制度により選任された人である場合には、本人以外でも請求することが可能となります。成年後見制度とは、認知症などにより判断能力が充分ではないと判断された人をサポートする制度です。裁判所の審判により成年後見人として確定を受けた人は本人に代わり、財産の管理や生活におけるさまざまな契約や手続きを行うことができるとされています。このため、成年後見人である場合に限っては、過払い金請求に関する手続きを行うことが可能となるのです。
本人以外がしたくてもダメ!本人に過払い金請求をする意思がない場合
過払い金請求は本人による請求が原則となっています。このため、本人以外の人がどんなに請求を行いたいと考えていても、本人にその意思がなければ請求することはできません。過払い金請求をすることは、余分に支払っていたお金を回収することができる可能性を持てるということです。
借入金の返済が既に完済している場合には、過払い金がそのまま手元に戻ってきます。さらに、債務を残っている状態であっても計算の結果、過払い状態になっていることがわかることもあり、この場合には残っている債務を返済する必要がないことはもちろん、過払い金が返ってくる状態ということです。
このため、本人に過払い金請求の意思がない場合でも、本人以外が過払い金請求について大きなメリットを感じることもあるでしょう。しかし、本人が請求しないという考えを持っている限り、本人以外の人が実行することはできないため、本人以外の人がどうしても請求をしたいと望む場合には、本人を説得する方法だけしかありません。過払い金とは何であるのか、どのくらいのお金が戻ってくるのかといったことを丁寧に説明してあげるとよいでしょう。
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本人以外の場合には注意が必要!過払い金の代理請求
過払い金請求を行うことができるのは原則、債務者である本人のみです。ただし、債務者本人に代わり実際に返済を行っていた連帯保証人であれば、条件によって可能となります。また、理由や状況によっては本人以外でも過払い金請求を行うことが可能となります。
本人の意思により代理人を選任する場合には委任状があれば可能です。また、債務者本人が亡くなってしまった場合には相続人であれば請求することができます。ただし、相続放棄をしないことや、最終取引日から10年以内であることといった条件もあるため注意が必要です。
また、過払い金請求は本人が行うことを原則としているため、代理人が請求する場合には、過払い金の総額が140万円以下である場合に対応できる簡易裁判所でのみしかできないこと、代理請求では報酬をもらってはいけないことなどにも留意しておく必要があります。
代理請求では業者との和解交渉が難航するため、専門家に依頼したいと考える人もいますが、本人以外では弁護士や司法書士への依頼が難しいという点も頭に入れておきましょう。そのほかにも、本人が認知症により判断能力がないと判断される場合であったり、もともと債務者本人に過払い金請求をする意思がなかったりする場合にも手続きを行うことはできないという点にも注意が必要です。
さまざまな事情により、本人以外が代理で過払い金請求を行う場合には、条件や注意点を十分に考慮した上で行動するとよいでしょう。
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